米国ベンチャーキャピタルNfXが出したAI Workforceの考察が面白かったので、要約し紹介したい。
労働市場とソフトウェア市場が一体化する
SaaSは、今まで企業内の仕事におけるアナログだったプロセスをデジタル化し効率化させた。しかし、SaaSは人なしには動かない。営業促進するSaaSサービスを導入したとしよう。そのサービスを入れても営業を雇う必要があるし、営業を育成する必要があった。
このようにかつてのSaaSは、導入後も人の稼働が必須だった。
そのため、ソフトウェア市場と労働市場は経済的には全くの別物として考えられていた。
しかし、AI SaaSがこの構造を変えた。AI SaaSは、人の稼働を取り込み一体化している。NfXは法人の支出として専門的な労働市場(ブルーカラーでなくホワイトカラーの専門家)は$5.5T、B2BSaaSへの支出は$230Bとざっくりと試算。本来だと2つのし上は重なることがなかったが、AI Workforceが誕生し、この境界線を曖昧にしB2B SaaSが労働市場に侵食している。
SaaS自体がオペレーションを実行できるとしたら、この巨大な市場を飲み込むだろう。日本で言うならBPO市場が対象だ。
加えて、この機会はソフトウェア市場の拡大でなく、利益拡大にもつながる。以下は特定の領域において労働サービス提供した場合と、B2B SaaSを提供した場合の利益ギャップの図だ。図左側のリード単価のコストは人間が営業として担当すると当然高いし、中央の法的な書類のお問い合わせも専門家からAIにするとコストが$525近くから$0.001になる。
上記で労働市場をホワイトカラーに制限したが、そのうち物理的な世界での労働市場にも参入してくるだろう。建築や製造などは大きな労働市場だ。
AI SaaSを提供するスタートアップの2つの戦略
ではAIはどのように労働力を補っていくのか。提供する側の戦略としては2つある。
AI同僚
AIによって一つの仕事を代替する同僚的存在のAI
スタートアップ例
AIエンジニア「Devin」
NVIDIAによる看護師「Hippocratic.ai」
AIベンダー
AIが労働市場を踏み込むAIエージェントについて、AI領域に携わる者として予想はしやすかったということは言いたい。
クラフターとしてEXIT前に資金調達をしていた2018年、私は実行するAIとしてExecution Intelligenceを作るとロードマップに描いていた。
以下のスライドで堂々とピッチしていた。今で言うAIエージェントに近いだろう。
弊社の初期構想としては、SaaSで企業のオペレーションデータを得た後、仕事で必要な作業を全て実行してくれるようなIntelligenceを作ろうとしていた。
ドメインデータが必要なエリアでも、2024年の今となっては簡単にAIエージェントを作ることができる。自社一人でExecution Intelligenceを実装する困難は大きく下がり、今後は各社がExecution Intelligenceを有していくだろう。