先日のブログ労働市場を置き換えるAIエージェントで、米国のAI SaaSが労働力(Workforce)に侵食していると書いた。
今回は米国VCであるFelicsが出したAIエージェントマップを紹介したい。彼らはCanva, Plaid, Notion, Runwayなど名だたる企業に投資をしている一流VCだ。
図は、各労働市場において代わりになろうとしているAIエージェントの一覧マップだ。一番左上にある「Sales/SDR」は営業とインサイドセールスという労働力。米国で営業に従事する人間は570万人。その労働市場をSaaSでDX化しているマーケットリーダーがSalesforce。そしてSalesforceのロゴの右隣にあるのがそれをAIエージェントだ。11XとArtisanについては前回のブログで紹介している。
弁護士の130万人は、Thomson Reutersが弁護士への書類処理業務を支援するSaaSツールを提供している。そこをまるっとHarveyがAIエージェントとして、弁護士の労働力を負担する(まだ置き換えるとは言い難い)ような使われ方をされている。
このように見ていくと、ソフトウェアエンジニア、会計、コンタクセンター、オペレーション、IT総務、秘書(日程調整)、マーケティングなど様々な領域のSaaSマーケットリーダーが、AIエージェントに狙われていることが分かる。
勝つのはマーケットリーダーかAIエージェントか
マーケットリーダーがAIを上手にSaaSツールに入れられると最強だ。
しかし、Salesforceが先日発表したAgentforceは、あくまでSalesCloud内に溜まっているリードへのアポ取得を自動化するぐらいだ。本当に営業が欲しいのは、SalesCoud内外関係なく受注できるアポの数だろう。11xとArtisanが強いのは、オンライン上に揃っている全ての情報からアポを生み出すことだ。
たくさんアポが取れるなら、営業にとって手段は関係ない。
現状のマーケットリーダーは自社データとプラットフォーム内でしか回遊できないという縛りが存在し、その壁を軽々と超えるAIエージェントに今のところ軍配が上がる。逆の視点では、AIエージェントはデータソースにかまってられないような戦略を取らないと、既存マーケットリーダーには勝てない。
AIエージェントスタートアップの未来予測
既存マーケットリーダーが外部AIエージェントをM&Aすることはイメージに容易いが、AIエージェントの強みは少ない人数で売上をあげやすいことだ。消費者向けツールと違い、労働力の置き換えに価値を提供するAIエージェントでは、B2Bでの導入に予算がつきやすく、マネタイズしやすい。
JasperはPLG型からSLGに展開した。法人企業への価値提供ができ営業をつけてもペイできるという示唆だ。
これらのAI企業は、キャッシュフロー豊かでVCからの大型調達に苦労しないだろう。マーケットリーダーにとっても高い買い物になるだろう。その前に見込みあるAIエージェントスタートアップを今年中に買えたら儲けものだ。
来年以降は、AIエージェントのユニコーンが各労働市場で軒並み揃うことになると予想する。